“良い合奏づくりのために”
(2016年度 文化庁“芸術家派遣事業” 中学校への出張講義より)
合奏は「心の友探し」
良い合奏は 互いを愛し、高める気持ちから生まれる。良い友をつくるに同じ。
第1章 アンサンブルの基本
1人だけなら「音作り」
2人寄れば「ユニゾン」
3人揃えば「ハーモニー作り」
①「音が合う」ということ。
ユニゾンが溶け合っているか? 溶け合って別の新しいトーン(響き)を創造する。
②チューニングはmoll(d-moll)で行う 何故か? 第3音のピッチによる
③ハーモニーが良い音程、バランスで聞こえるか?
・倍音がきれいに響くようにする。
④伴奏パートと主旋律パートのバランス。
・ベース系は自分の音に他の楽器を乗せてやるように。
他の楽器はベース系の上に乗っかるようにする。 ・高い音域ほどより小さく演奏するのが音響的には理想。(ピラミッド型)
・バスドラムはベースの音を程よく引き立てる。(ベースのお尻を叩いている気持ちで)
⑤いつも相手の挙動、音に傾注する習慣をつくる。
・楽器の動きや、他の人の動きをいつも感じる。
⑥アインザッツは「身振り」だけでなく「息」も揃える。
・吸気、並びに吐息のタイミング、スピードを揃える。
⑦テンポがくずれ易い状況を知っておく。
✱テンポが速くなりやすいのは
・単純に同音が連続するとき
・難しいと思った時
・スラーが掛かっている時 ★テンポが遅くなりやすいのは
・弱い音を演奏するとき
・低い音を演奏するとき
・長い音を演奏するとき
・美しいゆっくりした旋律を演奏するとき
⑧他者(共演者、指揮者)のテンポに乗れる訓練をしておく。
メトロノームを愛用しよう!
メトロノームは 決してガミガミ言わない、忍耐強い、最高の先生。
第2章 テクニックに関する留意点
①アタック=アタック練習は 呼吸、アインザッツ等、総ての基礎になる大事な練習。
②良い姿勢=いい音は良い姿勢から導き出される。
③呼吸法
・余分な力み、硬さはないか。
・深く、しっかりとした、腹からの支えによる呼吸が行えているか。
・息が腹から繋がっているか。
・息のスピード、エネルギーは適切か。
④ロングトーンは「呼吸」「音の豊かさ」「表現力」などを養う上で大切な練習。
⑤硬柔多様なタンギングが出来ること。「突く」のではなく「引く」。
⑦スタッカート、テヌート、アクセント等の本来の意味と、ニュアンスの違い。
第3章 音楽的な演奏法、演奏習慣
①アーティキュレイションの意味を知る。
・スラーをつける意味と基本的な奏法。
・スラー時のディミヌエンド(音を抜く)は音処理奏法の基本。
(音を抜く)とは? 練習法=「カッコウ」が上手に吹けるか?
②場合によって「長目に」、「丁寧に」演奏する必要がある音がある。
・連符の始まり(連符が均等に聞こえるために)
・アッポジャトゥ―ラ
・長い音、或いは休符の後に急に出てくる音。
それらを意識して演奏することが大切)等々
③不用意に「小さくなったり」「音程が下がったり」いい加減になりやすい音がある。
・弱い部分
・低い部分
・フレーズの終わりの部分
④アウフタクトを感じよう!
・アウフタクトは、名詞を形容する「形容詞」、動詞を形容する「副詞」のような役割。
いつも、アウフタクトを感じて演奏すれば、フレーズが活き活きとしてくる。
⑥強弱の的確な表現
・ピアノ・フォルテは即実行。 cresc. decresc.は鈍く反応するほうがよい。
・強弱記号(全ての音楽記号)は、書いてあるから行うというのではなく、実行すればどういうふうに音楽効果がもたらされるかを、感じながら実行することが大切。
⑦同じ「音」「音型」「フレーズ」が繰り返される場合は、同じように反復せず、必ず何か工夫をする。
⑧フレーズの上手な表現
フレーズには最小のフレーズごとに自然な抑揚(<>)、流れがある。
・音楽の方向性 ・エネルギーの流れ ・レガートを上手に表現する。
名曲には ●3段階型 ①<> ②<> ③<>
●エコー型
●問答型 による音楽作りがよく用いられている。
⑨ブレスの上手い取り方
《ブレスを取るのは、どういうタイミングがよいか》
・長い音の後
・タイの後
・音が跳躍するとき
・付点音符の後
・カンニングブレス (音楽の流れを損なわずに素早く行う)
《音楽的なブレスについて》
・原則的にはフレーズ単位、フレーズの半分、で取るのが望ましい。
・ブレスの前後の音の「大きさ」「長さ」の工夫で、滑らかな連結が出来る。
・息を取ってる時、既に次の音の始まりを考えるべき。
・フレーズを吹き終わっても半分以上の息が残っているくらいが望ましい。
・吹き終わった直後「にっこり」出来る余裕が欲しい。
(ただし、短いフレーズでも息を吹き切る場合もあります。)
⑩吹き終わった後もしばらくは音楽を感じていよう。
⑪リズム感 拍子感 機械的でなく自然なリズム感 拍子感 を表現しよう。
⑫弱音に対する注意。 往々にして人は必要以上に弱くし過ぎる傾向がある。
・息のエネルギーを保ち、支え、響きを失わないようにする。
第4章 机上の研究 音楽理解と楽曲分析
①作曲家について知っているか?
②作品の分析は出来ているか?
・全体のストーリー(物語)は描かれているか
・各部分のキャラクター(性格)、明暗等の整理はできているか
③自分なりに感じ、それを「音でもって如何に表現するか」をいつも考えて置く。
・「聞かせる」工夫をしているか?
ただ「吹ける」「弾ける」のは簡単、「聞かせる」ことは難しい。
・「ませた音楽」=「深遠な音楽」
いい演奏をするということは「大人」であるということ。
「大人」と言える演奏を目指そう。
・いつも「これだ!」と思って演奏しなくてはダメ。
頭の中が「空っぽ」で演奏する習慣が出来てしまったらお終い。
④楽譜に正確か?
正確にするのが目的ではなく、
正確にした結果、音楽がどうなるか? を感知することが大切。
⑤テンポの的確な把握。
⑥自然なアゴーギグの工夫。
⑦楽器操作の正確さと、新たな工夫。
替え指 ・テクニックの工夫。
⑧音響の工夫 ・ベルの方向 ・楽器の配置。
第5章 よい合奏グループを産む人間づくり
①自主性を喚起しているか?
・考えたり、曲の研究をしたりしているか?
・「教えてもらおう」という受動的な気持ちを払拭し、「盗む」という積極的な気持ちを育てる。
②いい演奏を聴き、良い演奏とはどんなものかを理解し演奏する工夫をする。
・音楽好き 音楽マニア心を育てる。
・真似することから始め、違いが解る耳を育てる。
・「見たとおり、聴いたとおり」、素直に音楽に接する心が大切。
③互いに刺激しあい、意欲を盛り上げるムード作り。
そういうメンバー(一員)になろうとする努力を培う。