いなかもん!

私の子供の頃は、お金で買うという体験がほとんどありませんでした。
「おこずかい」なんてものが無かったからです。

おもちゃといえば木切れでしたし、木切れを水路に流して水泳選手に見立てて競争させたり、木片を連結して「汽車」だと想像して遊んでいました。

おやつは木に登って柿や椋の実を終日食べていました。
(おやつなどという洒落た言葉などは存在していませんでした)

そんな中、お金で買ったおもちゃや、おやつをもらっている子どもをみて、何といいものを持ったり、食べたりしているのだろう‥!、と羨ましい限りでした。
お金で買ったものは、皆素晴らしい、ハイカラものに見えました。 
お金コンプレックスが育まれたのです。

今でも、庭先に美味しい果物がいっぱい実っているのに、マーケットで買うバナナやマンゴーが格好よく見えるのです。
繕った古い洋服や、手作りのバッグはなんとなく気恥ずかしくなります。

音楽についても同じでした。
きちんと月謝を払ったレッスンに通っていなかったことが、自分自身の心の中に深いコンプレックスを植え付けました。
月謝をちゃんと支払って勉強していないのはダメだ‥‥、と
音楽が大好きで、夢中でブラバンや合唱団を作ったり、編曲したり、指揮していたにもかかわらず‥‥。

貨幣流通の社会にどっぷり浸かると、お金を払ったものだけ、お金で買ったものだけが「まともなもの」に見え、手作りのものや、自然界のものは「どんくさいもの」「田舎くさいもの」と思えるようになってしまうのです。
そうしたお金コンプレックスを私のみならず多くの人が、いつの間にか身につけているのではないかと感じます。