ドイツの作家ミヒャエル・エンデは、『エンデの遺言』の中で、「自然界のあらゆるものは腐るのに、この世でお金だけが腐らない」と、現代の金融システムが引き起こす弊害に警鐘を鳴らした。
エンデは、「腐らないお金」が支配するマネー資本主義の矛盾を克服する手段として、「地域通貨」に注目した。
「地域通貨」とは、「腐らないお金」と切り離された、その地域でしか使えない独自の通貨のこと。それによって地域の経済循環をつくり出し、地域の力で地域を豊かにするという理念。
その「地域通貨」の理念を、パン屋で実現出来ないものかと、挑むパン屋さんがいました。
原材料を出来るだけ近隣から仕入れるようにし、
パンを媒介にして「地産地消」で、地域内で農産物を「循環」させることを目指し、
パンをつくって、売れば売るほど地域経済が活性化し、
かつ、地域の自然と環境が生態系の豊かさと多様性を取り戻していく。
これこそ「腐る(=循環する)経済」である。
と言います。
田舎で「正しく高く」パンを売る
渡邉さんは、人々に食の豊かさや喜びを提供するために、人工的に純粋培養したイーストではなく天然菌を発酵させ、手間と人手をかけて丁寧に美味しいパンをつくる。
原材料や労働の正当な対価として価格をつけるが、「利潤」をめざすことはしない。
小商いに徹する。
そういった、本来当たり前である筈の営みによって、
資本主義経済の矛盾を乗り越えることが出来る。
という。