ピアノの巨匠クラウディオ・アラウ(Claudio Arrau)氏逝く。(1991年6月9日)
アラウ氏は南米チリで1903年に生まれ、 享年88才でした。
クラウディオ・アラウ氏とはドイツ時代、マンハイムのオーケストラの定期演奏会でベート-ヴェンのピアノ協奏曲 第3番を一緒に演奏させていただいたことがあります。クラウディオ・アラウ氏77才の時でした。
77才とはいえ、凛とした、ダンディな優しさに溢れる紳士でした。
音楽も風貌の如く、ダンディな優しさに溢れる音楽でした。
ベートーヴェンと言えば「厳しさ」「激しさ」「生真面目さ」を先に思い描いてしまいますが、
クラウディオ・アラウ氏の演奏にはそれを超えた「優しさ」「穏やかさ」がありました。
時間とか、拍節をまったく感じさせない、永遠の時の中を自在に漂っているような、天上の音楽のような至福感を与えてくれました。
アラウ氏の演奏は永遠に私の脳裏に刻み込まれています。