オケ老人(ボケ老人にあらず)


老人ばかりで構成された平均年齢おそらく世界最高齢のアマチュア・オーケストラ「梅が丘交響楽団」(略称・梅響)に、ひとりの高校教師・中島が間違って入り込んでしまったところから物語は始まります。
 彼は、全く演奏など論外のはずの土下手くそな「オケ老人」たちのなかで勿論一番若く、力も備わっていると目され、いきなり指揮者になってくれと皆から懇願されます。
 その後、彼が本当に門を叩きたかった同じ町にある人気の
マチュア・オーケストラ梅が丘フィル」(略称・梅フィル)との確執、梅フィルの怜悧で完璧主義のコンサートマスター大沢が熱望するロシアの人気指揮者ゴルゴンスキーの来日騒動などを経て、日本・ロシアの国家機密の情報漏洩にまで話は展開していきます。

マチュア・オーケストラを体験したことのある方なら、きっと「そうだそうだ!」と、思い当たることがいっぱいあるのではないかと思う、愉快な本です。

最近は、すでに学校の部活動しかり、
マチュア音楽活動に参加したいと気軽に考えても、
どの活動もコンクールを目指したり、この本の中の「梅が丘フィル」のように、
クオリティと効率至上主義で、不本意に競合の世界に巻き込まれ、
安穏とした気持ちで参加するなんてことは許されなくなっています。

競合社会のしくみを、この「オケ老人」という本は、皮肉り、笑い飛ばしてくれているのかも知れません。

映画化もされています!
指揮をする羽目となった高校教師・中島先生(男性)が、
映画では「杏さん」(女性)になっています。