大阪阿倍野の名物酒屋「明治屋」

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大阪、阿倍野にある居酒屋の名店「明治屋」、私が知っている居酒屋の中で最古風の店だ。
ここのカウンターに腰を下ろし、ゆったりと酒を飲みながら、かつて存在した日本のたくさんの良き居酒屋と良き酒飲みの輩に思いを馳せる。
この店は午後1時に開店し、開店と同時に常連が現れるらしい、(この時間には私は行ったことはないが‥‥)。
ぽつりぽつりと客が訪れ、ぽつりぽつりと去って行く。ほとんどが一人客だ。
大声を出したり、深酒をするような客はいない。
仮に一見の客が酔って迷い込んできたとしてもすぐに素面に戻るだろう。
店の雰囲気が酩酊を許さないのだ。
かと言って気難しさとは対極に位置する穏やかな雰囲気の店だ。

この店の大きな銅製の燗器が珍しい。
大きな箱の中には熱湯が入っている。
上に五つの酒の注ぎ口がある。
樽からチロリに移した酒を注ぐと熱湯の中のらせん状の管を通って酒は適温になり、箱の下の出口から燗酒になって出てくる。

これを湯豆腐をアテにしてゆるゆると飲む。
ここの湯豆腐は大きな鍋で温められた半丁(油揚げのように横に切ってある)を丼に入れ、その上に朧昆布を置き、醤油で味を調えた出し汁を注ぎかけたものだ。口取りに柚の小片が添えてある。
これと酒2本で1110円。これだけで十分満足する。

店の前の道路は阪堺線が通り、道沿いの店は道路拡幅工事のために移転し、新地に移っている。
この店も世界遺産」とは言えまいが重要無形文化財(店の建物ではなく、業態、常連客を含めた無形)として新店舗に移って行った。